(資源メジャーの業務について興味がある方は鉱山工学という学問を参照)
概要
資源の中で近代の人間生活にとって極めて重要なものは「石油」「天然ガス」「石炭」の三大資源であり、これら三大資源の地域別の埋蔵量は下図のようになっています。(縦軸:billion ton)グラフ出典:WORLD COAL ASSOCIATION
それぞれの可採埋蔵量は、石炭は118年分、石油は46年分、天然ガスは59年分と推計されており、人類はあと100年ほどでエネルギーの大転換を迫られることになっています。可採埋蔵量のカラクリについてはこの記事あたりをどうぞ。
なぜ石油は「なくならない」のか?
そして21世紀は、間違いなくこの貴重な資源を管理する数少ない資源メジャー達の天下となる。そんな資源メジャーと貴重な資源を、今日は紹介します。
資源メジャーが存在する資源は主に下記の9つの資源。
石油
天然ガス
鉄鉱石
原料炭
金
銅
ニッケル
ボーキサイト
ダイヤモンド
以下では、それぞれの資源の簡単な特徴と資源メジャーの名前を見ていきます。なお、各資源メジャーについての詳しい説明は別の記事で行います。
石油
近代の人間生活と切っても切り離せない物質であり、身の回りに石油化学製品と名のつく物が非常に多いことからもその重要性が分かる。海外では石油メジャーと呼ばれる巨大多国籍企業が探鉱・生産・輸送・精製・元売りまでを一貫して手がける垂直統合を行っているため、日本の石油会社も精製・元売りなどの下流事業のみではなく、探鉱・開発・生産などの上流事業も手がけるようになってきた。
(参考サイト:Wikipedia:石油,はてなキーワード:石油,organicsoul)
資源メジャー一覧
・エクソン・モービル(本社所在地:アメリカ)
・ロイヤル・ダッチ・シェル(本社所在地:オランダ)
・BP(本社所在地:イギリス)
・シェブロン(本社所在地:アメリカ)
・トタル(本社所在地:フランス)
・コノコフィリップス(本社所在地:アメリカ)
天然ガス
一般に天然に産する化石燃料である炭化水素ガスのことを指す。天然ガスにはメタン・エタン・プロパン・ブタン・ペンタン以上の炭素化合物や窒素が含まれ、産出する場所によってその割合は少しずつ異なる。北アメリカ産・アルジェリア産の天然ガスには1 - 7%ものヘリウムが含まれており、世界の数少ないヘリウムの供給源となっている。燃焼したときの二酸化炭素排出量はカロリー当りで、石油より少ない。ただし、主成分であるメタンの地球温暖化係数は大きいため、大気への放出は避ける必要がある。
液化天然ガス(Liquefied natural gas; LNG)は、気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にしたものであり、体積は気体の約1/600しかない。輸送・貯蔵を目的として液化される。
(参考サイト:Wikipedia:天然ガス,treehugger)
資源メジャー一覧
・ガスプロム(本社所在地:ロシア)
(他、多くのオイルメジャーが天然ガスも兼ねる)
鉄鉱石
酸化鉄を主成分とし、赤鉄鉱・磁鉄鉱・褐鉄鉱などがある。鉄鉱石は世界中から産出するものの、2006年時点の埋蔵量1,800億トンのうち、ロシア、オーストラリア、ウクライナ、中国、ブラジルの上位5カ国だけで約73%を占める。コスト・品質の面から商業的な鉱山が操業できるのは、オーストラリア、ブラジル、中国、カナダ、インド、ロシア、アメリカ合衆国、ウクライナなどに限られる。これらの国は、地面から直接鉄鉱石を掘り出す、露天掘りができる。特に、オーストラリアやブラジルの鉄鉱石はFeの占める割合が約65%と高品質である。
採掘された鉄鉱石は、ベルトコンベヤーなどの設備によって貨車や貨物船(河川用)に積み込まれ、輸出港まで運ばれる。そこから、鉱石運搬船という鉄鉱石専用の貨物船で外国へ輸出される。なお、トラックはコストが高いのであまり使われない。
(参考サイト:Wikipedia:鉄鉱石,東京大学総合研究博物館:鉄鉱物と鉄鉱床)
資源メジャー一覧
・ヴァーレ(本社所在地:ブラジル)
・リオ・ティント(本社所在地:イギリス、オーストラリア)
・BHPビリトン(本社所在地:オーストラリア)
原料炭
粘結性・発熱量の高い石炭で、加熱炉などの燃焼用に使用される石炭とは区別される。粘結度に従って強粘結炭,弱粘結炭の別がある。銑鉄製造の高炉用コークスの原料に使用するものと、ガス発生炉用とがあるが、一般に前者では高粘結度が要求され,日本ではほとんどが輸入に頼っている。(参考サイト:コトバンク:原料炭とは,Gas Prices USA)
資源メジャー一覧
・エルクバレー・コール(本社所在地:カナダ)
・エクストラータ(本社所在地:スイス)
・アングロ・アメリカン(本社所在地:イギリス)
・リオ・ティント(本社所在地:イギリス、オーストラリア)
金
貴金属でありそのままの形で自然界に存在しているため、精錬が必要な鉄などよりも早く人類が発見できた。他の貴金属とともに人類最初期から利用された金属とされる。見栄えの良さや化学的特性を利用して指輪などの装飾品として、また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきたのに加え、貨幣または貨幣的を代替する品物として用いられてきた。金は、耐食性・導電性・低い電気抵抗などの優れた特性を持ち、20世紀になってからは工業金属として様々な分野で使用されている。近年では、廃棄された工業用品(おもに携帯電話などの電子基板)を溶解し、金・リチウムなどの貴金属や希少金属を抽出する事業(いわゆる都市鉱山)も展開されている。
金は地球全体に広く分布しており、存在比は0.003 g/1000 kg程度(0.003 ppm)である。熱水鉱床は変成岩と火成岩のなかに生成する。金鉱床は銀・銅・水銀・硫化鉄、テルルなどのレアメタル、砒素を同時に産出することが多い。銀やレアメタルは鉱山の収益を補えるが、水銀や砒素は公害の原因になり、逆に収益に影響を及ぼすことがある。経済的に金鉱山と言える物は平均して1000 kgあたり0.5 gの金を産出する必要がある。典型的な鉱山では、露天掘りで1 - 5 ppm、通常の鉱山で3 ppm程度である。人間の目で見て金と分かるには鉱脈型の鉱床で少なくとも30 ppm程度の濃度が必要で、それ以下の金鉱石では鉱石内に金があることを人間の目で見分けることはほとんどできない。
1880年代から南アフリカが金産出の2/3を占めていたが、2004年時点では1/3まで比率が低下した。オレンジ自由州とトランスバール州にある金鉱山は世界で最も深く掘られた鉱山となっている。1899年から1901年までのボーア戦争はイギリスとボーアの鉱山労働者の権利と、南アフリカの金の所有権に関する争いである。その他の主な金の産出地はロシア、カナダ、アメリカ、オーストラリア西部にある。
日本ではかつて、比較的多く金が産出した。マルコ・ポーロの東方見聞録などで「黄金の国」と呼ばれていたのも、日本産の金が出回っていたからである。戦国期には甲斐国において黒川金山や湯之奥金山が稼業し、金山衆により採掘された金鉱石を粉成、精錬し金生産を行なっていたと考えられている。しかしながら、江戸時代前期以降は国産の金山は徐々に衰え始めた。たとえば有名な佐渡金山もすでに採掘をやめ、現在は観光地化している。この一方、現在海底の熱水鉱床からの産出が将来的に期待されている。
(参考サイト:Wikipedia:金,PAWNBROKERS TODAY,Michigan Technological University:A. E. Seaman Mineral Museum)
資源メジャー一覧
・ニューモント・マイニング(本社所在地:アメリカ)
・アングロ・アメリカン(本社所在地:イギリス)
・バリック・ゴールド(本社所在地:カナダ)
・ゴールドフィールズ(本社所在地:南アフリカ共和国)
銅
銅は先史時代から使われてきた金属である。銅とスズの鉱石は混在することから、メソポタミアでは紀元前3500年頃から銅にスズを混ぜた青銅で道具を作るようになった。青銅器はエジプト、中国などでも使われるようになり、世界各地で青銅器文明が花開いた。金と同じく、耐食性の高さなどから古来より貨幣の材料としても利用されている。日本の硬貨では5円硬貨が黄銅、10円硬貨が青銅、50円硬貨、100円硬貨、旧500円硬貨が白銅、新500円玉がニッケル黄銅という銅の合金である。また、元素記号の Cu は、ラテン語の cuprum から。この語はさらに cyprium aes (キプロス島の真鍮)に由来し、キプロスにフェニキアの銅採掘場があったことに由来する。
銅鉱石の生産は世界全体で1510万トン(2005年現在)である。その内訳はチリが35.2 %と大半を占め、以下米国7.5 %、インドネシア7.1 %、ペルー6.7 %、オーストラリア6.1 %、中国5.0 %、ロシア4.6 %と続く。かつて日本は日本三大銅山とされる足尾銅山、別子銅山、日立銅山等、多くの鉱山をかかえた輸出国であったが、現在は全て廃鉱となり100 %輸入に頼っている状態である。
(参考サイト:Wikipedia:銅)
資源メジャー一覧
・コデルコ(本社所在地:チリ)
・フリーポート・マクモラン(本社所在地:アメリカ)
・BHPビリトン(本社所在地:オーストラリア)
・リオ・ティント(本社所在地:イギリス、オーストラリア)
ニッケル
地殻中の存在比は約105 ppmと推定されそれほど多いわけではないが、鉄隕石中には数%含まれる。岩石惑星を構成する元素として比較的多量に存在し、地球中心部の核にも数%含まれると推定されている。光沢があり耐食性が高いためめっきに用いられるほか、ステンレス鋼や硬貨の原料などにも使用される。優れた軟磁性を生かして変圧器の鉄心や磁気ヘッドに、その耐熱性を生かしてタービン用コンプレッサ材料等に用いられる。その他にも、チタンとニッケルの1:1の合金は最も一般的な形状記憶合金となる。さらに、水酸化ニッケルはニッケル・水素蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池等の二次電池の正極に使われる。
ニッケル鉱石の生産は世界全体で134万トン(2009年現在)である。その内訳はロシアが19 %、オーストラリア14 %、インドネシア12 %、カナダ10 %、ニューカレドニア7 %となっている。この金属は、日本国内において産業上重要性が高いものの、産出地に偏りがあり供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると定められている。
(参考サイト:Wikipedia:ニッケル)
資源メジャー一覧
・ノリリスク・ニッケル(本社所在地:ロシア)
・インコ(本社所在地:カナダ、2006年にヴァーレによって買収)
・WMCリソーシズ(本社所在地:オーストラリア、2005年にBHPビリトンによって買収)
ボーキサイト
ボーキサイトはアルミニウムの原料であり、酸化アルミニウムを 52% - 57% 含む鉱石である。アルミニウムは非常にありふれた元素であり、地殻中には3番目に多く存在するが、そのほとんどがアルミノケイ酸塩として存在する。アルミノケイ酸塩はケイ素との結合が強く精錬が難しいため、ボーキサイト以外の鉱物から取り出すのは経済的に見合わない。ボーキサイトを精錬することによりアルミニウムの新地金が得られるのだが、精錬過程の溶融塩電解で非常に多くの電力を要する。一方、アルミニウムスクラップを溶解再生するエネルギーは新地金の製造エネルギーの 3~5%台と少なくて済み、日本国内に製品として備蓄されている約 7 年分のアルミニウムをリサイクル原料として有効に活用することは、重要なことである。
2006年の産出量は1億9000万トンであり、オーストラリアが 35.5% を占めていた。
(参考サイト:Wikipedia:ボーキサイト,季刊誌「アルミニウム」2002年1/2月号掲載:アルミニウムのリサイクル,Alcor Technology:Bauxites of the World)
資源メジャー一覧
・ルサール(本社所在地:ロシア)
・アルコア(本社所在地:アメリカ)
・リオ・ティント(本社所在地:イギリス、オーストラリア)
・アルキャン(本社所在地:カナダ)
・BHPビリトン(本社所在地:オーストラリア)
・中国アルミニウム(本社所在地:中国)
ダイヤモンド
ダイヤモンドは、炭素の同素体の1つであり、実験で確かめられている中では天然で最も硬い物質である。宝石や研磨剤として利用されており、結晶の原子に不対電子が存在しないため電気を通さない。ダイヤモンドの結晶形成には非常に高い圧力が必要となるため、マントル内で形成され、地殻の変動や火山活動などで地上付近にせり上がってきたものが発掘される。ひとつのダイヤモンドが形成されるには、数百万年から数千万年もの時間が必要だと考えられている。
ダイヤモンドを含む岩石は、主に「キンバーライト」と呼ばれる火成岩の一種であり、その含有率は極めて低く、数千万分の一程度。その中でも、宝石級のものは2%にも満たないほど希少である。
ダイヤモンドは非常に高い屈折率をもっている。そのため、「シンチレーション」と呼ばれる表面反射、「ディスパーション」と呼ばれるプリズム効果による虹色の輝き、「ブリリアンシー」と呼ばれる内部を通った光の全反射、これら3つの輝きによってダイヤモンド特有の豪奢な輝きが生まれる。
2004年時点の総産出量は15600万カラット。ロシア (22.8 %)、ボツワナ (19.9 %)、コンゴ民主共和国 (18.0 %)、オーストラリア (13.2 %)、南アフリカ共和国 (9.3 %)、カナダ (8.1 %) の上位6ヶ国で、世界シェアの90%を占める。
(参考サイト:Wikipedia:ダイヤモンド,Diamond 12)
資源メジャー一覧
・リオ・ティント(本社所在地:イギリス、オーストラリア)
・デビアス(本社所在地:南アフリカ共和国)
・アングロ・アメリカン(本社所在地:イギリス)
・アルロサ(本社所在地:ロシア)
日本と資源メジャー
日本は世界的に見て工業大国であり経済大国であり消費大国です。資源を消費することから逃れることはどんな国も出来ません。そして、日本は鉱石資源の保有量が極めて少ない先進国であり、資源メジャーが存在しません。出典:Mint Map: The World's Resources by Country
工業製品の原材料である鉱石を安定的に確保するのは日本にとって極めて重要です。現状、資源メジャー(BHP billiton, Rio Tinto, Anglo American etc...)からの輸入に頼っていますが、価格交渉権は持ち合わせていません。
それでは日本はお先真っ暗かと言うとそうでもありません。実は、日本でも資源獲得・鉱山権益獲得に力を入れている会社が存在します。そう、日本の誇る総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事etc...)です。莫大な資金を投入すると提案してるのに権益のシェアを断られたり、国営企業への買収提案を拒否されて株主になれなかったり、と海外資源メジャーに対して手をこまねきつつも着実に歩を進めているようです。日本企業で資源関係のお仕事に携わりたかったら総合商社、JX、JOGMECあたりがいいのかもしれませんね。
・併せて読んでほしい参考エントリ:鉱山工学という学問
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